お正月も瞬く間に過ぎましたが 皆様いかがお過ごしだったでしょうか。 私の正月休みは 読書三昧(5冊を読破)でした。 読書に集中できる習慣は貴重です。 読書好きだった母の教えが影響しているように思います。 高齢出産(41歳で昭和22年に6人目の私を出産)した私の母は、 私が30代の時はすでに70代に突入。 『どんなに読書が好きでも、 歳をとると読めなくなる時が来る。 視力が衰えて字が見えにくくなり 字ズラを追っていても、頭に入りにくい。 さっき読んでいたところを、また、繰り返してみたり・・・ 我ながら情けない。 30代はどんな本でも読みこなせるし、 水が浸み込むように読める時、今だよ、今。 今のうちにどんどん読んでおきなさい。』 と口癖のように諭されたのを思い出します。 それと、 今でも老眼鏡なしで本が読める視力のおかげ・・・ これも親に感謝ですね。 読めて楽しめている間は大丈夫だと、 読書は自分なりの健康バロメーターになっています。 さてこの正月に読了した5冊の中でも、 特にお勧めしたい1冊の新刊・新書があります。 髙崎順子著 『フランスはどう少子化を克服したか』 新潮新書
です。 帯に、 「親に期待しない」 「3歳から学校に」 「出産は無痛で」 という見出しが踊ります。
日本生まれながらフランスで子育て中という著者により、
2000年代のフランスにおける子育て支援政策が いかに効果を発揮したかなどが
詳細に紹介されています。 章立てには興味をひく言葉がならんでおり、 これに驚き、アレルギー反応を引き起こす方も中にはいらっしゃるかも。 第1章 男を2週間で父親にする 第2章 子供は「お腹を痛めて」産まなくてもいい 第3章 保育園には、連絡帳も運動会もない 第4章 ベビーシッターの進化形「母親アシスト」 第5章 3歳からは全員、学校に行く けれど、
その分深く考えさせられるのも事実です。 第1章と第2章は、 マザーリングの周産期医療の視点からも共感できます。 第3章は 日本の保育士さんたちの、 少々行き過ぎた「自己犠牲的」 職務内容を何とかしなければいけないと
同時に、通園に必要な準備用品のあまりの多さには保育園に預ける若いママたちには過重負担では?と
感じている人々の関心事と同じように思えます。 実際にすでに実践している事例も 日本の保育園・幼稚園のあちこちにあります。 ただ、それを支持し、 応援してくれる市民や若い世代の両親の意識をまとめあげる何かが、 今の日本には不足しているのかもしれません。 第4章は、 この本でも比較紹介されている保育ママさん制度に加えて、 まさしくマザーリング・マザーの存在と活用の方法を、 知って欲しいと、手前勝手ながら思います。 そして第5章は、 日本の幼稚園教育の素晴らしい特徴を知り、 制度として見直しをはかればフランス以上の 成果を期待できるはずだと感じます。 著者は「日本では世帯による個人雇用の文化がない」から(p153) 普及しないと言っています。
確かにそういう面は否めない、 惜しい部分ですね。 戦前には日本にも家族の中に、 家事・育児介護を担う人を個人的に雇用する風習はありました。 なので、また創り出せればいいと思います。 これまでの日本の習慣では、 家族が育児も介護も無償でするのが当たり前でした。 それが限界にきているのかもしれない。 このことを認識できれば、 そして、家族の主婦が個人として人を面接し、 交渉し、契約するというノウハウを 家事力のひとつのようにして身につけたら、 またきっとおもしろい広がりをつくれるに違いありません。 それは日本にも共感と、 社会的寛容さをとりもどす、 意識の転換のようなものです。 育児と介護(~看取り)は
誰にとっても大変なことのはず。 ならば、 家族で担えるほど、甘くはないのだという実態をだれもが共有し、 社会的なサポートが必要であること、 そのサポートを受けることを罪意識なく活用できたら よいですね。 日本人の意識が変わるには、 いつの時代も「外からの情報」が 役立ちます。 今わたしが思いつく限りでも、
たとえば、 英国では妻の「出産に立ち会う」という理由なら 夫は講演もキャンセルできる、という話があります。 むしろキャンセルしないで講演するほうがおかしい。 「それでもお前は夫か?」と人間性を疑われてしまいかねない、
のような話が、 元柔道金メダリスト、山下泰裕氏のインタビュー記事で紹介されていました。
(1987年の週刊朝日p40~41 教育的指導うけてみどり夫人の出産に立ち会い納得した欧州流「夫の条件」) また、 1990年のデンマークでは「看取り寄り添い休暇法」 が成立しています。 親しい人とのかけがえのない時間をともにするための有給休暇です。 条件は死を迎える本人の指名があることだそうです。 個人で雇った、 仏の母親アシストや、 デンマークの個人ヘルパーにも、 公的助成金が支払われる制度があります。 ・・・ともかく、
日本で生まれ育った著者が、 フランスで子を育てて感じた、意識の違いや 大きなカルチャーショックを一緒に体験するつもりで、 気になった方はぜひご一読ください。 少子化政策に限らず、どんな立場のかたにも、 あたらしい発想をさずけてくれる良書だと思います。