厚生労働省の終末期医療に関する調査によれば、
一般国民において、
終末期の療養場所に関する希望は、
「自宅で療養して、
必要になれば医療機関等を利用したい」
が半数を超えています。
在宅、ときどき病院、が本音ということでしょうか。
「終末期の療養場所をどこにするのか」は、
ほんとうに大切で、
当事者にとって切実な問題です。
具体的にイメージしていただくために、
私がこの数年継続的にかかわらせていただいている、
Sさんのケースを紹介します。
Sさんは奥さんを亡くされた72歳から独居生活をしています。
80歳以降はたびたびの足の骨折を経験し、
さらに脳梗塞にもなって入院・転院を繰り返します。
いよいよ車椅子が欠かせなくなってきた83歳のときに、
ご自宅での在宅療養を選択しました。
私は最期まで在宅で過ごすことも可能なケースだとみて、
片付けや環境整備、ケア体制構築をお手伝いしました。
Sさんも積極的にバリアフリーに室内改装し、
訪問医師と訪問看護による在宅診療・在宅ケアサービスを駆使するなど、
さまざまな知恵と工夫で上手な暮らしを実現していました。
ただ、だんだんと要介護度が高まっていきます。
昨年9月には車椅子での座位(しっかり背中を立てて座っていられる)が保てなくなり、
食事もベッドでとるようになってきました。
入浴も介助の段階から、
ベッド上の体拭きしかできなくなりました。
意思疎通はかなり明確にとれるSさんですので、
今後の方針について私とはもちろん、
疎遠になっていたご家族ともよく話し合いました。
ここで在宅を続ける方法もあるし、
希望次第では施設等に移ることもできる。
詳しくは省略しますが、
本当に当事者それぞれが、悩みながら話し合いを重ねました。
これが苦しいけれど、必要な通過点でした。
施設等といってもいろいろあるので、
よくリサーチも重ねたうえで最終的には、
とあるサービス付き高齢者住宅のワンルームマンションに入居することを、
本人が決意しました。
ベッド上での暮らししかできない今、
「広い自宅の維持管理費が無駄に思えてきた」
というセリフが印象的でした。
いかにも元金融ビジネスマンらしいSさんの選択です。
一般的には病状と介護度により、
適切な療養場所は変わります。
ただそれは、
こういう状態にはこの施設がいい、のような、
「あてはめ式」で考えられるものでは決してありません。
つまりどこで療養するのが正しいのかは、
一概には言えません。
ご家族の意向も、
本人の意思と状態も、それぞれの関係性も、
そして状況や環境や、ときには運みたいなものも含めて、
本当に千差万別、ケースバイケースとしかいえないところです。
Sさんも「絶対に自宅に居たい」とおっしゃっていた時期があったし、
自らの意思で病院から在宅療養、在宅療養からサービス付き高齢者マンションへ、
と経験してきたことで、
納得していまの生活に順応している面もあります。
最初からサービス付き高齢者マンションだったら、
もしかしたら心残りがでてきたかもしれません。
療養場所の選択は、
死生観とも深く結びついています。
終活や人生会議(ACP)にもたくさんの検討項目がありますが、
「どこで療養したいか?」
まずはそこから考えてみることも、
ライフマネジメントのコツかもしれません。
お知らせ
みんなのMITORI研究会が主宰する「看取りのドゥーラワークショップ」では、
最新の看取り事例と「ドゥーラ」の概念をご紹介した後、
看取りについて語り合います。
知識として知るだけでなく語り合うことは、
情報収集の意味だけでなく、
それ自体が癒しや追想や共感といった、
ご自身へのフィードバックをもたらします。
ぜひ一度体験してみてください。
日程は下記となります。
ホームページからご予約のうえご参加ください。
2020年1月24日(金)、31日(金)、2月7日(金)、14日(金)、22日(土)、28日(金)、3月6日(金)、13日(金)、20日(金)、27日(金)
場所は新宿御苑前近く。
各回とも18:00開始 20:00終了です。
どうぞよろしくお願いします。
Comments