優しく言いかえよう 介護のことば 三省堂 ¥1400+税 遠藤 織枝 三枝 令子
医療・介護で使われる単語が、 むつかしい短縮語が多く、 ふつうの人にわからない・・・と、言われ続けています。
20年前までは、 「わからない」と言える患者さんは少なかったし、 30年前、 医師以外の医療・ケア職も、 「難解で意味不明だから単語をやさしくしませんか?」 とは、誰もいいませんでした。
そういう発想がなかったのです。
2000年に、ちょうど、 東大病院の接遇向上センターのマネジメントに
関わるようになったころから、
医療接遇という視点で
①わかる(私の身になって) ③親身な立場で(安心・信頼・安全) ③簡単に、今、すぐ(学習に時間をかけられないのが病人)
の3条件を満たせる わかりやすい病状や生活・保健指導が必要だと痛感しました。
国立国語研究所 外来語に関する意識調査(全国調査) (2003年~2004年) が開始されて、 外来語をわかりやすく言い換えて欲しい分野の調査で
1位が政治・経済 56,4%
2位が医療・福祉で 56,0%
という結果でした。
どちらも1位といっていいような結果です。
少し話は飛びますが、
「いじめ問題は、 いじめられる側がいじめられる私に何か悪い点があるのでは?
いじめられないようにするには、 私はどうしたらいいのだろう
・・・と発想している間は出口がない。
いじめる側も悪い。人権侵害だ。 という発想を持たないと。」
高名な教育評論家の 尾木ママこと尾木先生は そうした意味のことを言われています。
同じ発想で、 医療用語のわかりにくさも、
「わからない私がいけないのでは? 」
ではなく
ケア職者(看護・介護・ヘルパー職)側も、 説明する相手が一般の生活者であるということを 明確に意識しなくてはなりません。
医療用語を並べて、
やさしく解説したつもりでも、 相手には伝わっていないことを知るプロセス、 わからないのだということをわかる必要があります。
著者の遠藤さんと三枝さんは この本で、
130語に及ぶ言いかえの例を具体的に収録・表現しています。
外来語のままで意味の浸透を図ったほうがいいのではないか? と思うものありますが、
確かに納得のものも多いです。
確かに、褥瘡は床ずれに、 更衣は着替えに、言いかえる文化を介護社会に リードしたほうがいいと、私も思います。
エンド・オブ・ライフケアやターミナルケアを看取りケアに、
グリーフケアを哀しみのケアに、と 本書は提案されていますが、 みなさんはどう思われますか?
全5回の在宅医療勉強会
(家で最期まで療養したい人に)の勉強会を運営してきて、 そろそろ、
共通認識をもってわかりやすい”言葉さがし”に取り組みたいと思います。
在宅での看取りへのケアの道のりの中で
ご家族と本人にも、医療・ケア職にとっても、 知りたい、知っておきたい、知ってほしい情報を、 3者がわかりあい、わかちあい、納得できる情報提供の方法と言葉(文章や資料)を模索し、試し、提供できるようにしていきたい。
そんな、 みんなのMITORI研究会を目指したいと思います。