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精神の伝統と看取りの文化

近藤和子

石川真理子さんという文筆家を 最近知りました。

その死生観に共感したので、 私も読んでみようと思います。

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万事入精の心懸けによって武士道は生きてくると私は考えます。

人の肉体はいずれ滅びますが、

その人の生き方如何でいつまでもその魂は輝き続けることを

祖母は教えてくれました。

そういう心境に至ることができたのも、

祖母の教えが私の中で生き続けているおかげです。

私の心の中では祖母の魂は滅んでいないのです。

たとえ今日命が尽きたとしても、自分の魂が輝き続けていれば、大切な人たちに愛やエールを送り続けることができます。

万事入精の心で生きることがそれを可能にすると思うのです。 私たち日本人の心の奥には、先人たちの魂が生き続けています。

一人でも多くの方々にそのことを自覚していただき、

よりよい生き方を目指していくことによって、

尊い日本の精神が後世に継承されていくことを願ってやみません。

『致知』2014年9月号より引用

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そこで、 共感のベースになっている、 新渡戸稲造著の武士道について ご紹介してみましょう。

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武士道:1852年~1933年 新邊戸 稲造 1900年出版

武士道とは 武士が守るよう求められ、教育される道徳的理念の規範である。それは成文法ではなく言い伝えによって、また著名な武士や家臣の筆によって伝えられてきたわずかな格言があるに過ぎない。武士道は 目に見える姿、形があるわけではない。日本の土壌に特有の華である。

(中略)

武士道は、一つの独立した倫理体系としては消滅するかもしれないが、その力はこの地上から消え去ることはないだろう。諸々の武勇と文徳の流儀は崩れさるかもしれないが、その光明と栄誉はその廃墟を切り抜けて生きていくだろう。あの象徴的な花のように、四方の嵐に吹かれ、人生を豊かにする芳香で人々を祝福していくだろう。時代が過ぎ、武士道の慣例が葬り去られ、まさにその名が忘れ去られたとしても「路辺に立ちて眺めやれば」その香気は遠く離れた、見えない丘から漂ってくるだろう。 

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思い返せば、

1998年~ 私は加藤シヅエ先生(元・日本家族計画連盟会長・国会議員) の98歳から104歳でお亡くなりになるまでの期間、 毎週日曜日、丸1日中ケアを担当させていただいていた経験があります。

当時私は48歳、先生は98歳、 ゆうに50年の隔たりのある間柄だったにも関わらず、 先生と私はとても気が合いました。

誠実であること。

弱音を吐かず忍耐すること。

常に明るく前向きであること。

失敗を糧とすること。

いつ、どんな時でも礼節を尽くすこと。

信念に背くようなことについては、 決然と相対すること。

決心・決断したら迷わず前進すること。

人の命には限りがあること。

1日一生。

生きるべき時に生きること。 死ぬべき時に死ぬこと。

肉体は死んでも魂は永遠であり、 天が生涯私たちを護ってくれる。

こういった“ものの感じ方”、 その死生観がぴったりだったのです。

それは、マザーリング(母子支援)という同業の徒だからなのか?

と思ってみたのですが、 私が明治生まれの母に、 耳にタコができるほど聞かされたエピソードをお話しすると、 先生は

「まさに同じ。それが武士道ですよ。

日本全国、口伝として継承されてきているのでしょう。」

と。

50年の世代差を超えてなお、 共感を結ぶ、 この感覚は何だろうと、 興味を持ちました。

その共通の認識が新渡戸稲造著の武士道でした。

先生とは、 今後もなお価値あることと、 国際化の現代には、ちょっと、

変革が必要ね(例えば、自分の妻を愚妻とへりくださること等)

といった話題で、話が尽きない、楽しい日々でした。

死生観について、 学問上の裏づけや、国際比較、 宗教学の背景を論じることも大事です。

同時に、なんの学習も形も文書もないのに、 口伝として、100年の時を超えてなお、 庶民の暮らしの中にしみわたっているものがある。

そのかすかな記憶を呼び覚ますような 日常の働きかけも大事な気がしています。

要するに武士道が有機的な範とした ひとりひとりが実行して、 語らずとも感化されていくだろうと期待した何かです。

幼い時から繰り返し見たり聞いたりしてきた、 心地良きこと、優雅なこと、

何がとは言えないけれど、 感動してしまう何事かによって、 伝わる伝承を私は大切にしたいと思います。

特に、 これからのMITORIを考える時には。

看取りは医学・科学ではなく、文化だと。

(なので、看取りは文化とキャチフレーズをつけさせていただきました。)

(参考図書)

新渡戸稲造著 武士道

石川真理子さんの女子の武士道

そして

武士の娘 ちくま文庫 杉本鐵子 大岩美代訳

もおすすめです。

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