MITORI(看取り)は、五感のもてなし
と私はよく言っています。 「五感のもてなし」 と聞いてすぐに思い浮かぶのは、 どんなことでしょう? 五感とは
視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚のこと。 胎児期から満たされている感覚が、触覚と聴覚です。 胎児はお母さんの声を聴きながら育つことが、 今では広く知られています。 胎教という考え方もあるように、 たとえばご夫婦が喧嘩したり、 お母さんをいらだたせたり、 恐怖を感じて声を荒げるような場面はさけ、 母親が聴いて心地よく感じる音楽などを 胎児にも聴かせてあげたいですね。 そして、私たちは誰でも赤ちゃんのとき ①優しいまなざし(視覚) ②優しい言葉かけ(聴覚) ③微笑まれること(雰囲気を察知) ④抱きしめられ(触覚) ⑤食べ物を与えられて育ち(味覚・嗅覚)
その心地良さを一生求め続けると言われています。 これも、五感のもてなしです。 母親が果たせる、 赤ちゃんへの最初のもてなしが聴かせることだとすれば、 私たちが果たせる最期のもてなしも、 聴かせること、音楽なのかもしれません。 大切な人を亡くした後、ふと、気づいたら、 音楽に癒されたという経験を持つ方々がいます。 私にもあります。 もしかしたら、 そんな音楽の数々を見たり、聴いたり、 知ったりしてみることで、 ご自分が最期に聴きたい音楽もみつかるのかもしれません。
五感の一つ、「聴覚」の効果に、私たちはもっと、もっと興味と 関心をもってみてもいいのではないでしょうか? 勉強会にご参加いただいた受講生のおひとりから、 親しい人を亡くされたあとの音楽への こんな気づきを投稿いただきました。 許可を得て、ご紹介してみます。 ------------ 「心を支える癒しの音楽」 一人ひとり、 「心を支える癒しの曲」は年代、成育環境、その時の状況・心情などで様々です。 私はある土曜日の朝、テレビから流れてきた音楽に惹き付けられ、 聴き入ってしまいました。 アンディーウイリアムスの「May Each Day」という曲です。 この曲が今、私の「心を支える癒しの音楽」となっています。 私は昨年3月、夫が心筋梗塞を起こしました。 幸い九死に一生を得ましたが、平穏な日々が突然、 一転することを実感いたしました。 そして翌月、夫の回復を「良かったね」と喜んでくれた兄が 胆のう癌で検査から1ヶ月も経たず、この世を去りました。 死期を告げられた兄は、 同居している96歳の母に先に逝くことを詫び、 「母を頼む」と妻や子、そして弟や私に手を合わせ、旅立ちました。 この曲は、悲しみや苦しみの中でも、 「生」ある時間の一時でも良い時を過ごしたと感謝し、 充実させて生きる・・・「生」のある「今」、 その時が何より大切なこと ・・・それを美しいメロディに乗せて、歌っていました。 母と毎晩、電話で互いに何気ない平穏な1日の出来事を語り合い、 無事に過ごせたことに感謝し、 この曲のように「ありがとう、おやすみなさい」と電話を切り、 明日も良い日でありますように・・・」と、祈る毎日です。 ------------- 皆さまも、それぞれの思い出や、 MITORIにまつわる5感のもてなしの経験談がございましたら いつでもお寄せください。