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近藤和子

私たち団塊世代の最初で最期の仕事 リビング・ウイル=生前の意思表明のすすめ


リビング・ウイルとは、 終末期になったときのために、 延命治療などのケアをどうしてほしいかという意思を、 生前に紙に書くなどして表明しておくことです。 なぜ、このような「表明」が必要なのでしょうか? 医学の発達により、栄養補給や人工呼吸などの、 生命を維持する技術が高められてきたことは、 歓迎すべきことです。 ただ、その技術がときには、 人それぞれの死生観をも超えて、 用いられてしまうことがあります。 もちろん、 医療側は熱心な治療として、ケアしてくれているのです。 そしてご家族はすこしでも長く生きてほしいからこそ、 様々な工夫をこらしてがんばってくれているのです。 ただ、 明らかな終末期や治る見込みのない段階においては、 生命を維持するために、 どこまでのことをすべきなのか? どこまでのことをしてほしいのか? そうした最終的な判断には、 やはり「ご本人の意思」が、 最大限に尊重されるべきではないでしょうか。 そして死期が迫った場合には、 すでに本人の明確な意思が確認できないことも考えられますから、 生前に紙に書いておくことが必要なのです。 ■日野原重明先生のお話 さて、 リビング・ウイルという言葉をお伝えするとき、 私が特に気にいっているのは、 日野原重明先生の、以下の解説です。 引用してご紹介します。 --- テンダーラビングケア(略してTLC)の中のテンダーという言葉は、 愛を形用する最高の表現で、 医療の世界では大切な言葉として使われています。 日本ではあまり知られていませんが、 アメリカでは、がんの末期の患者さんが苦しまないで生涯を終えたいと願えば 「私の最期の時には無理な延命処置をしないで、 苦しまないように眠らせてください。」と 前もって医師や看護師に伝えておきます。 すると医師や看護師は「あなたの言葉を大切にして無駄な治療はせず、 楽に、平和に眠るように最期を迎えられるように協力することを約束します。 どうぞ、私たちに任せて下さい。」と答えます。 これを実行するのがテンダー・ラビング・ケアです。 診療記録に略語でTLCと書いてあれば、 きめ細かな配慮をもって、患者さんの最期に愛を送りますよということです。 どの医師や看護師にもわかるようになっていて、 容態が急変した際には、 その患者さんが望むように愛の最高のケアをしてもらえるのです。 (略) 積極的な治療や無駄な検査を受けることは一切拒絶し、 自然な状態で臨終を待ちたいことを遺書として表明し、 尊厳死の宣言書(これを英語ではLiving Willという)として 医師に提出することができます。 日本には尊厳死協会が、 NGOの団体として1976年に発足しています。 日本尊厳死協会に加入して、 これを願う人たちの数は近年増えてきました。 (聖路加国際病院理事長名誉院長 日野原重明氏 「2004年 テンダー・ラブ」ユーリーグ出版p54より抜粋) --- 日野原先生のお話には、 テンダー・ラビング・ケアと、リビング・ウイルが、 同じ医療の文脈で説明されており、 どちらもその本質は「患者さん主体のケア」なのだなと感じることができます。 リビング・ウイルは、 もし自分に回復の見込みがなくなったときは、 延命措置をしてもらうのではなく、 苦痛の緩和によって自分らしい最期を遂げたいと願う人のためにあります。 死に直面したときの姿勢を考え、表明しておくことは、 自分らしい生き方の探求でもあります。 同時に、リビング・ウイルは、 遺される家族やあなたの大切な人を、 迷いや後悔からまもることにもつながるのです。 リビング・ウィルは、 私たち団塊世代が特に関心をもって取り組むべき、 ”人生最期の仕事”だと思います。 お医者さんから「延命治療を続けますか?」 という意味のことを聞かれたとき、 家族はとても迷うものだからです。 たとえどんな状態になっても、 身近な人たちは、「回復してほしい」し、 「長く生きていてほしい」と 強く願うものだからです。 そうした心境では、 延命措置をやめる判断は、 とても難しく、勇気のいることなのです。 ■みんなのためのリビング・ウイルを! フォーマットづくりの試み 日野原先生の言葉にもあるように、 日本では一般財団法人日本尊厳死協会が中心になって、 リビング・ウイルの登録管理を行っており、 啓発に1976年~取り組まれてすでに41年の歴史を重ねています。 みんなのMITORI研究会でも、 自分らしい最期を迎えたいと考える多くの方に、 リビング・ウイルを作成することをおすすめします。 さらにリビング・ウィルを表明した人々が テンダー・ラビング・ケアに 恵まれるような”看取りの文化”を求めていきたいと思います。 死の話題はどうしても、 「縁起でもない」といって遠ざけられてしまいがちです。 でも、自分が死に直面したときのことに思いをはせるのは、 決してネガティブなことではありません。 むしろ愛する人々に対する最期の素晴らしいギフトとなるでしょう。 リビング・ウイルがあれば、 自分も安らかに、家族の負担を少しでも和らげる看取りに、 一歩近づけると思います。 さらに、医療(介護・看護)に携わる人々の迷いや後悔を少なくすることができます。 さらに私たち団塊世代が最期をどう生きたかを 意識して示し、遺していくことは、 愛する家族とともに、これから続く若い世代に影響をあたえ、 彼らの人生の指針にもなるでしょう。 今や、リビング・ウイルは様々な市民団体、 そして病院、公的機関、自治体によっても 積極的に取り組まれています。 (下記 日本尊厳死協会資料参照) 私も、様々な書式、呼びかけの趣旨に沿って、 団塊世代に向けて、

もっと親しみやすくしていきたいと思います。 もしよろしければ、 試作の”みんなのリビング・ウイル”を参考にして あなた自身のリビング・ウイルを書いてみていただけませんか? そして、是非、みんなのMITORI研究会にも投稿していただけませんか? そのひとつひとつが、きっと、私たち団塊世代の誰かの参考になるでしょう。 その積み重なりが、 ひとりひとりのリビング・ウイルをベースにした、 日本の新しい≪幸福な看取りの文化≫につながりますように。

文頭へもどる 参考資料: 出典:我が国の≪リビングウィル≫≪生前意思表示書≫    財)日本尊厳死協会事務局 2016・4 ■ 市民運動団体発行 1-1 財)日本尊厳死協会「尊厳死の宣言書」(東京都、1976年) 1-2 終末期を考える市民の会「終末期宣言書」(東京都、1990年) 1-3 満足死の会「満足死(終末期医療)の宣言書」(高知県黒潮町 1993年) 1-4 LMD・レッド・ミー・デイサイド研究会「病気になった場合の事前指定書」福岡県1996年) 1-5 いのちの輝きを考える会「尊厳死の意思表示カード」(長野県茅野市 2005年) ■ 医療施設発行 2-1 富山医科薬科大学附属病院「過剰な延命治療拒否の申し出」(富山市 1997年) 2-2 新潟市民病院「過剰な延命治療拒否の申し出」「蘇生措置を行わない要望書」新潟市2006年) 2-3 定山渓病院「新・終末期になったときの私どもの希望」札幌市 2009年) 2-4 国立長寿医療研究センター「私の医療に対する希望(終末期になったとき)愛知県大府市2007年」 2-5 聖路加国際病院「私のリビングウィル」(東京都 2010年) 2-6 済生会熊本病院「あなたの意思を伝える『事前指定書』(熊本市2010年) 2-7 島根大学医学部附属病院「事前要望書」(島根県出雲市 2012年) 2-8 東京ほくと医療生協「私の医療に関する希望書(事前指示書)」東京都2012年 2-9 北里大学北里記念研究病院「リビングウィル」(東京都 2011年) 2-10富士見高原病院「延命治療に関する事前要望書(リビングウィル)」長野県2012年) 2-11高崎総合医療センター「私の意思表示ノート」(群馬県 2012年) ■ 公的団体発行 3-1(社)全日本病院協会「リビングウィル書式」(2007年) 3-2(社)飯田医師会(長野県)事前指示書(自分の最期は自分で決める)2008年 3-3 日本公証人連合会「尊厳死宣言公正証書」 3-4(公)全国老人保健施設協会「終末期の看取り事前確認書書式例」(2012年) 3-5(社)佐賀県医師会「過剰な延命治療・蘇生術拒否申出書」(佐賀県 2012年) 3-6(社)横浜市鶴見区医師会「連携ノート」のリビングウィル ■ 自治体関係発行 4-1 須高地域医療福祉推進協議会「終末期医療について生前の意思表明」長野県須坂市等3市町村2013年) 4-2 広島県地域保健対策協議会「ACPの5つのステップ・私の心つもり」広島県広島市広島大学等2013年) 4-3 宮崎市「私の想いをつなぐノート」(宮崎県、2013年、2016年更新) 4-4 半田市地域包括ケアシステム協議会「私の事前指示書」愛知県、2014年) 4-5 見附市「マイ・ライフ・ノート」(新潟県 2014年) 4-6 島田市「もしものときの意思表明」(静岡県2015年) 4-7 守山市「いままでのわたし 、これからのわたし」(滋賀県2015年) 4-8 札幌市「はじめてのエンディングノート」(北海道、2015年) 4-9 狛江市「エンディングノート」(東京都、2016年) ■ 他の動き 5-1 神奈川県「医療のグランドデザイン」2012年=「延命治療の意思表示カード」に言及 5-2 千葉大学病院版「私の治療に関する希望書(事前指示書)」(2014年、千葉県への提言書より) 5-3 POIST(米国)

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