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近藤和子

老年病科の視点(ものの考え方)


さらに、もう少し、老年病科の視点(ものの考え方)をご紹介します。

なぜなら、“みんなの看取り”を考えようと研究会を立ち上げるに至った思いは、私がライフスサイクルの最初の出産・育児から、性成熟期・更年期とたずさわってきて、いよいよ老年期の健康問題に取り組むようになったからです。

出産には助産師さんという出産を助ける職業があります。人生の始まりです。

だとしたら、人生の終結としての死を見守り、優しく見届けてくれる“見守り専門ナース”が、居て欲しいと、そういう職業があっていいはずです。

1980年代は“ナチュラル・バース”いわゆる自然なお産をしようという提唱ブームが起こりました。それは、自然で、家族の素朴な喜びとともにあった出産が、科学的医療技術のおかげで、病院から監視される出産に大きく変化していった道のりでした。それまでは助からなかった命が医療科学的技術と機器のおかげで、助かるようになった貢献も大きかったのです。が、女性たちが自然な出産って?どうあることが自然なことなのかを、どんどん見失ってしまっていった道のりでもありました。

帝王切開出産の増加、陣痛誘発剤の点滴による計画出産、様々な機器による管理出産、さらには妊娠そのものへの、不妊治療に始まる代理出産に至るまで、その課題もまた、積み残されています。

その流れと呼応しているかのように、みえるのが、自然な死“ナチュラル・デス”への認識の迷いです。かつて、家族の中での自然な営みであった、死も、近年特に、様々な医療科学技術のおかげで、延命処置が可能になり、人々は、なにが“自然な死”なのか、アンチエイジングには関心が高くても、老いに至る自然な生理的変化への理解と受容が見失われているようです。

先に、出産は“バース・プラン”どのように出産したいかと医療者に提示する選択習慣は今や、すっかり定着し始めています。が、一方の“デス・プラン”どのように亡くなりたいか?を選択し、医療者や家族に示す、いわゆる“死の準備教育”や“死生観の醸成”はまだまだ、不十分です。

誰もが迎える終末期を、特に“老い”を中心に、寿命としての老い、看取りを考えたいと思います。自分が納得いくかたちで迎えるために、ささえる家族も安心して過ごせるために、さらに、その家族を支える訪問看護師、訪問ヘルパー等の職種の人々お安心をさせるために、たとえ、ひとり暮らしになった高齢者の老いの最期も、ひとりで死なさなないですむサポート・システムで、ホスピタリティ(医療接遇)の真価を看取りに継承させていきたいと願います。 経済学者のドラッガーによれば、病院や介護施設は安全と安心を売っていますと。安全は科学です。安心は接遇です。そして看取りは、文化なのです。

日本に新しい看取りの文化を、ご一緒に求め、探してきましょう。

その探求の道のりで、老年病科のものの考え方を取り込んでいくことは不可欠なのです。

そこで、さらに、東大病院老年病科秋下雅弘教授による、一般書をダイジェスト紹介してみます。この図書のタイトルは 薬の飲み方となっていますが、読むと、高齢者の老いの

考え方が良く理解できる入門書になっているところが、何よりのおすすめポイントです。

・・・以下、ダイジェスト紹介(文責:近藤和子)

「高齢者にとっての賢い薬の飲み方・生活の仕方」がよくわかる!

おすすめの本をご紹介します。

「薬は5種類まで~中高年の賢い薬の飲み方~」

東京大学大学院医学系研究科教授 秋下雅弘(PHP新書,2014年)

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○年をとってからの薬の飲み方

子どもに子ども用の薬の飲み方があるように、高齢者には高齢者の体に適した薬の飲み方がある!

○若いときと同じ健康観ではいけない

例えば・・・

・年をとると薬が効きすぎになってくる

・持病が増えるため飲む薬が多くなり飲み合わせなど複雑な相互作用を起こすことがある。

→年をとるほど、薬の副作用は増える&予想外の作用が出ることがある!

○事例【睡眠薬が原因で体がふらつき、認知症のような症状が出た事例】

●81歳・男性

●足元がふらつくようになり、物忘れもひどくなる。もの忘れがあるため認知症薬をのみはじめてから食欲低下で体重減少。

●常用薬「ハロキサゾラム」(睡眠薬)+認知症薬「ドネペジル」(商品名アリセプト)

●ふらつき・物忘れの原因

 何十年も常用していた睡眠薬 

 →年をとって、薬の代謝が悪くなり、薬の作用が長く続くようになったため、睡眠薬のせいで足元がふらついたり、認知機能が落ちてしまった可能性がある

●食欲低下の原因

  認知症を遅らせる薬は、食欲を低下させる副作用が出ることがある

●対応

  CTで認知症の所見がなかったため、認知症薬を中止。常用していた睡眠薬を、半減

  期(薬成分の血中濃度が半分になる時間)の短い睡眠導入薬に変更する。

●結果

  食欲が戻りはじめ、二か月で体重回復。認知症の簡易テストも高得点に。

  足元のふらつきやもの忘れもなくなって、ほぼ正常に戻った。

○高齢者の睡眠薬

【高齢者の睡眠はそもそも4、5時間】

夜9時に寝たら、夜中の2時に目覚めるのは当然。

夜中に目覚めるから睡眠薬を飲むという発想は間違っている。

 夜の11時に布団に入れば問題解決!

日中に問題が起きなければ睡眠時間は少なくてもいい!

○負のスパイラル

 高齢者に特有の老化現象や生理的な変化、病気の特徴を知らないと、単なる老化現象も“病気”ととらえて、薬だけが増えていく。

そして薬の副作用が出ると、それも病気と勘違いして、さらに薬が増えるという負のスパイラルに陥ることがある。

○逆にいえば・・・

高齢者に特有の老化現象や生理的な変化、病気の特徴を知っていれば、薬を飲まなくても、日常生活や習慣を工夫することで、健康的な生活を送ることができる場合もある!

○年齢があがるほど増える副作用

 75歳以上の後期高齢者になるとなんと15%以上に何らかの副作用が出ている!

 ※東大の老年病科に入院された患者さんを対象とした薬物有害作用(副作用)のデータによる

 高齢者では、緊急入院する人の3-6%は薬の効きすぎや、多剤服用による配慮不足

が原因

○高齢者には高齢者なりの薬の量がある

【肝臓機能の低下】

年をとると肝臓の代謝機能が落ちてきて薬が長く体内にとどまってしまう。

年をとると肝臓でアルコールを分解する力が弱くなって、お酒が長く体内にとどまるので、酔いやすく、二日酔いしやすくなるのと同じ・・・若いときに比べて酔いやすくなったと感じたときには、薬も効きすぎるようになったかもしれないと思うとよいかも・・・

○【腎機能の低下】

80歳の人だと、若い人の半分くらいしか腎機能がない。

→薬は腎臓で排泄されるので、半分しか機能がなければ半分しか排泄されない

→このことを考慮して薬の量の調節が必要

NG:市販の薬を買って「おとな」の量を飲む

☆医療従事者が注意するのはもちろん、薬をもらい飲む方も、今までと同じつもりで薬をもらう姿勢でいてはいけない!自分の意見として医者に言うべき事柄です。

○年をとればとるほど個人差が大きくなる

体がまだまだ若い人は、長生きするでしょうから薬もしっかり処方し、生活の管理も厳しき行うべき。でも・・・・

同年齢でも体も虚弱で精神的にも衰えていて、それほど余命が長いとは思われない人にはそれなりの薬の飲み方やほどほどの生活管理の仕方があってもいいと思う。

→「さじ加減」が大事

余命を考えて、ほどほどの薬を・・・

○薬は急にやめてはいけない

薬を急にやめるのが一番体に負担がかかる。素人判断で飲むのをやめるのはとても危険なことです。

→ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗うつ剤はパタっとやめると症状が悪化する。

○飲む薬は5種類までにおさえる(目安)

だいたい薬が6種類を超えると、副作用が15%くらいにはねあがる。

老年医学会で検討した結果「5種類」を目安にするという方向で意見がまとまっている

薬を飲まないのが一番いいのですが、必要な薬は飲まなければいけない。「さじ加減」が大事。

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