老年病科ってご存知ですか?
加齢医学とか言われる医学分野なのですが、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座という長い名前の講座とともに、東大病院の中に、老年病科という診療科があります。これが意外と世間一般に知られていません。
2006年に東大病院に全国に先駆けて“接遇向上センター”が設立された時、初代センター長がこの老年病科教授の大内尉義先生でした。
その大内教授のもとで、私は初代の接遇向上センター顧問として、実際の“医療接遇”のノウハウ構築に取り組ませていただきましたので、大内教授をはじめとする老年病科教室の医師たちの熱意とその志の高さに触れる機会に恵まれたことは何よりの幸運でした。
2000年代は、私自身の高齢化にともなってか? クライアントの仕事も相談内容も高齢化してこれまでの育児相談からめっきり介護家族の相談や原稿執筆にシフトしてきていたからです。
70歳前後の患者さんの相談に応じる時、それは“老年病科”を受診されたほうがいい、と切り出すと、決まって『いやー、まだ、私は老人とは思っていません。』とか、『老年病科ですか・・・』と苦笑。エイジングに対する抵抗感は相当なものなのだな、と気付かされることが多くあります。
★この感じ、ちょうど、女性の更年期問題を研究していた時期(1991年~)女性たちに“更年期がね・・・”という言葉を発したとたん、嫌な顔をされていたのと似ています。)そんなに、嫌がることではないのですがね。
★私たちは育児相談にあたる時、“小児は大人の小型ではない。”と乳幼児なのに、大人と同じ“内科”にしか受診していないご家族に、是非、小児科と診療科目が先に書いてある開業医を探して受診してください、と勧めることが指導の最初でした。そんな事情とも似ています。
と、いうわけで、老年病科というところがどのようなものなのか、先の大内尉義教授が退官記念として編纂されたこの本(やさしい高齢者の健康教室”医薬ジャーナル社¥2940)は、平易な文章で、非常にわかりやすく、病気のことはもちろん、加齢学から観た自然に老いるということがどういうことかを気づき、知る入門書になっていて、特に介護職の職員さんたちに紹介して、喜ばれています。
以下、その図書からの要約・紹介です。ご参考になさってください。
・・・・・ダイジェスト紹介(文責:近藤和子)・・・・・
●高齢者とは?
高齢者とは満65歳以上の人をさす⇒高齢者の人口比率23%(2011年)
・高齢者 65歳以上
・前期高齢者 65歳~74歳
・後期高齢者 75歳以上
・超高齢者 90歳以上
●老年病科とは?
高齢者が抱えている病気を総合的に診察して、治療したり予防をする診療科。(老年科・老人科・高齢医学科という名称もある)※現在、老年病科は大学病院など一部の病院 にしかないため一般の人にはなじみが薄い。
●老年病科の特徴は?
①総合的な治療を、高齢者の特徴をよく把握した 上で行う。
※高齢者と若い人とでは、症状の出方が違うし 検査値の見方も違う!
②「病気を診る」のではなく「病人を診る」ことを最優先する。
※心も体も元気に暮らせるための治療(QOL向上のための治療)を行う。
※家族構成や経済状況など、社会的な面にも目を向けて、最適な治療を選択する。
※老年症候群とは
老化に伴う生理機能変化や慢性疾患、生活習慣などが複合的に関与する高齢期に多発する病態
●老年病科を受診するメリット
高齢者は一人で多くの病気を抱えていることが多い。(心臓・視力低下・聴力低下など)
①たくさんの診療科にかかる負担を軽減できる
②全体の状態を把握し、どこが悪くて、どういう順番でどういう治療をするのかの司令塔になる
③高齢者特有の症状に対処できる※原因がはっきりしない食欲低下や筋肉の衰えなどの“老年症候群”(=老化に伴う生理機能変化や慢性疾患、生活習慣などが複合的に関与する高齢期に多発する病態)
●高齢者の病気の予防法
①低脂肪食・低塩食
②繊維性の野菜・果物
③適度な運動
④リズムのある積極的な生活習慣
⑤‘生きがい’のあるライフスタイル
⑥愛のある人間関係
=受容・共感・傾聴のある人間関係
以上、 東大病院老年病科の紹介でした。