開催冒頭のあいさつより。
2025問題。つまり私たち団塊世代がこぞって75歳以上を迎える時、それは多死の時代を意味し、看取り、孤独死、単身の遺族の増加が大きな社会不安問題になっています。
そこで提示された地域包括ケア。多職間連携によるケア・サービスの構築です。
本日お集まりの皆様職種一覧をご覧ください。そのひとつひとつの職種がどのようなもので、どのようなサービスを期待できるのか、その人はどんな人なのか?
今は誰もわからない。
私たち一人ひとりの職業人は一生けん命だけど、地域やご家族には他の職種には伝わっていない現実があります。
もっと、もっと、私たち職業人は 地域やご家族に自己表現する必要があります。
どんなサービスができるかを知っていただく工夫と努力が必要です。
そしてご家族は、もっともっと自己開示してくださる必要があります。
そうでないと、私たちは何が求められているサービスかがわかりにくいからです。
さらに、在宅医療には、3本の杭が必要です。
横浜のマンション問題、旭化成の杭うちトラブルと同じで、在宅医療の世界にこの3本の杭が、必要な市民の深さまで達していない現実があります。
杭は外からは見えません。が、この3本の杭がしっかり達した建物の中に、上にと、様々なケアの花が咲くのだと思いたいのです。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、
①リビング・ウィル ②老年医学・ ③家族看護学 の
“ものの考え方”を聞いていただくのが本日のテーマです。
テレビのように面白くはないかもしれませんが、長年生涯をかけて研究しておられる方々の話をまず聞いていただきたい。専門分野がちがうと、知識の背景が違うので、必要ない話、そこまで知らなくてもいい情報も多々あるかと思いますが、まずは丸ごと、飲み込んでみて、不要の種はだし、解釈や注釈を付記する作業は、皆様とともにあとから、みんなのMITORI・研究会で取り組んでみましょう。
さらに聞き慣れない、新しい言葉はまだ、あります。
チャプレンとドゥーラ。これについては2月13日に 平穏死については 3月26日に 地域包括医療 在宅医療の実際事例は 5月28日に グリーフケア・グリーフワーク・グリーフケアラーそしてレジリエンス(再生)については7月16日にそれぞれ紹介します。
今、それぞれの研究者がこれらの新しい言葉に乗せて、新しく、私たち生活者に役立つスキルを開発しています。
その新しい事実をもっと多くの市民にも、多く他の職種にも知っていただきたいのです。
2025年問題という困難な課題も、もしかしたら 新しい言葉と新しい関係性が新しい解決策をもたらすかもしれません。
なぜ、今回の勉強会を企画することにしたか、それには2つの理由があります。
一つは 2013年から110回以上に及ぶ、介護施設職員の研修講師を務めることで、介護職者の思いと現実に触れ、死をタブーにしないケアを、社会認識として醸成していかないと、2025年からの多死の時代を迎える前に早晩、介護職が燃え尽きてしまうという危機感を持ったこと。
2つ目は、私事で恐縮ですが、2010年に、私の大切な人、夫を亡くした経験からです。夫の主治医師は老年病科の秋下先生でした、夫は老年病科という総合診療に恵まれて、病気は多々あるものの元気の良い後期高齢期を過ごせました。また、リビングウィルの実践者でした。おかげで、私は夫の希望どうりの看取りを果たすことができました。
そのサポートには家族看護学とドーラの“ものの考え方”が大いに力になりました。喪失体験はとても辛くても、希望どうりの看取りを果たせた思いは幸福感がありことを知りました。科学は災害を予報することはできても災害そのものを止めることはできないと言われます。そのとうりに、いくら知識ああっても、その後のグリーフワーク、グリーフケアをしていただけた、高木慶子先生、深くレジリエンスへのリードを果たしてくださった家族看護学教室の上別府圭子先生方の、援助がなければとても越えられないものでした。
私も看護職ですが、援助職だからと言って、わが身には不幸や災難が起こらないわけではないのです。そのわが身に起こった災難にも、ここに挙げた様々なサポーターに助けてもらって良いのだと、同じケア職の仲間にも理解を求めたいと思います。
まだまだ、日本の家族は病気や看取りの辛い体験を、ただ、黙認、否認、我慢してしまう傾向が強いと思います。自己開示すれば正しい支援者に出会えるという体験、適切なサポートを受け容れることは、私たちに健全なレジリエンスをもたらしてくれるという事例や社会認識を大きく育てていきたいと思います。全6回という大編成の勉強会の企画と運営は、4年半にわたるグリーフケアの成果であり、レジリエンスを果たした証です。
その感謝の気持ちと恩返しの気持ちを込めて、全6回の勉強会の運営に当たっていきますので、皆様のご支援とご指導、ご鞭撻をどうぞ、よろしくお願い致します。
以上