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近藤和子

第3回MITORIカフェ開催報告 「私のエンドオブライフケアとは」を実施しました


第3回MITORIカフェ開催報告

「私のエンドオブライフケアとは」を実施しました

みんなのMITORI研究会代表の、近藤和子です。

2019年6月29日に開催した第3回MITORIカフェでは、メンバーの松嶋彩子さんに「私のエンドオブライフケアとは」をテーマに体験発表をしていただきました。

松嶋さんは病院の看護部長をされています。以下、松嶋さんの発表記録をご紹介します。

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はじめに

今回のテーマ、「エンドオブライフケアとは」という大きなくくりになっていますが、そもそも私がこのエンドオブライフケア援助者養成講座というものを受講した経緯からお話ししましょう。

厚労省は超高齢化社会を迎える日本の医療を「終末期医療」と表現してきました。しかし、なんとなく聞こえが悪く、いったいいつからいつまで?と疑問の声も聞かれH27年ごろからその呼び名を「人生の最終段階における医療」と表現されるようになりました。

また、看取り、ACP(アドバンスケアプランニング・人生会議)、ターミナルケア…など様々な言葉が使われ医療職だけの言葉ではなく、一般の方々にも広く知れ渡る言葉になりました。最近、本当に日本は多死社会の時代に入ったと実感しています。私は東京町田市にあります療養病院の看護部長をしておりますが、当院の例を見ても、年間のご逝去の数がこの3年ほどで前年までの2倍の増加を示していて、年間200名を超えています。

厚労省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を発表し、S62年以来、検討会を重ね、H30年後版ガイドラインを改訂。これは同時に看取りの増大・地域包括ケアシステムなど、医師や医療従事者だけが知っていればよいというものではない。国は広く国民・医療・介護従事者に理解されるよう改訂された本ガイドラインを普及させること! としてきました。

この「人生の最終段階に~ガイドライン」の中で言っていることは

「繰り返し、本人の意思を聞き、合意すること、話し合うこと、それは変化しうるものであり、そのたびに合意の内容を変更し、記録を残すこと。安楽死は、このガイドラインの中には問題としていないこと。あくまでも緩和ケアの充実…」

        ↓

さて、国のガイドラインはできた。私たちのような末端の病院はどう動くべきか。

病院は国のガイドラインをもとに、病院独自のターミナルケアの指針を作らなければなりません。

例えば、「うちの病院でできること、できないこと。できないことに関してはこうしてほしい。という要望が出た場合はこのようにしていきます」のように。さてこれを作成しなければならないのであれば、まずは学ばなければならないなと、あれこれ探していると、ひとつ「?」が浮かんできました。

『院内の指針を作ることはもちろん大事だが、果たして私のやるべきことはそこだろうか。患者本人、家族(今入院している人たち)をまずは救っていかなければならないのではないだろうか…』

ここで、私はターミナルケアや看取り、認知症高齢者、緩和ケア、エンドオブライフなど様々なワードで検索し、今回「エンドオブライフケア協会援助者養成講座」に行きついたのが、この協会との出会いでした。

ここで「看取りへの苦手意識」から「関わる自信」へ

人生の最終段階をケアする人材育成プログラム。これを学んで、私が教育していくことが

必要なのではないか…このような思いからこの講座を受けることにしたのです!

「エンドオブライフケア協会」は、東京に事務局があり、横浜市瀬谷区にある、めぐみ在宅クリニックの小澤竹俊医師(代表理事・院長)がホスピス等勤務した経験を持ち2015年4月に立ち上げ、全国でこのエンドオブライフケア援助者養成講座基礎講座を精力的に行い独自の認定士を出している。この研修の受講対象者は医療・介護の現場体験1年以上(診療サポーター、経営者、医療・介護者として患者・家族・利用者の人生の最終段階に現在関わっている、過去に関わっていた、あるいは関わろうとしている人。これらの医療介護福祉に関わる全職種が対象。

さてそれでは本題に入りましょう。

皆さんにお聞きしてみたいことがあります。

質問① 介護職の後輩が質問してきました。「Aさん、1人暮らしの女性。68歳。近く

に妹夫婦が住んでいる。元気に過ごしてきた。2年前に肺がんを発症。化学療法を続けてきたが最近になり、これ以上の治療は難しいといわれた。痛みの出現と食欲の低下が目立つようになり、買い物は妹にお願いするようになった。これからどうなっていくのか不安に。あなたは、Aさんにこれからどうなっていくのか聞かれた。どう答えますか?

ディスカッション① Aさんがどうしたいのか聞いたほうがいいのでは?内面的なもの

を引き出すことが必要?何か言うにしても、信頼関係が大事なのではないか。

⇒これからどのように変化していくのかを伝えるのは、人が生まれた時の反対の流れをしていくと伝える。生まれたばかりの赤ちゃんは一日のほとんどを眠って過ごし、お腹が空けば泣き、ミルクを飲む。だんだん起きている時間が長くなり、首が座り、腰が据わり、寝返りができ、座る。その反対の流れである。人は生まれたときに戻っていく。

質問② 歩くことがだんだんできなくなることは伝えた。具体的な課題ってどのようなことですか? トイレは?家の中で過ごしたい? でも、1人で生きていけるの?誰に助けを求めるのか。たとえ一人でも、家族がいなくても、家で暮らせ最期を自宅で迎えられる時代?

ディスカッション② 過ごす場所ってどんなところ?

質問③ もし病気が進行して自分のことができなくなったら?

脳梗塞の女性。75歳。左マヒの後遺症でリハビリをしているが、ある時、こんな言葉が。「あの時死んでしまえばよかった。大切な犬の散歩ができない。こんなにリハビリ頑張ってるのに、少しもできるようにならない。」このような言葉が聞かれる人に「何言ってるんですか!生きたくても生きられない人もいるんですよ」と励ますつもりで言ってしまった。そしたら「あなたには私の気持ちはわからない」といわれた。

こんな時、どんな言葉をかけるべきだったのか。

ディスカッション③ 励ますだけではだめ? やっぱり信頼関係が大事なのでは?

この人の気持ちになることが大事なのでは?

※苦しむ人への援助で重要なこと

苦しんでいる人は自分の苦しみを分かってくれる人(理解してくれる人)がいるとうれしい。どのような私たちであれば、分かってくれる人(理解してくれる人)になれるのか。

1.私が相手を理解しようとすることは大切。

2.しかし、私が相手を100%理解することはできない。

3.相手が私を分かってくれる人(理解してくれる人)と思ってくれる可能性はある。

4.どんな私であれば、苦しむ相手から見てわかってくれる人(理解してくれる人)になれるのか。

それは聴いてくれる私である。

⇒コミュニケーションの原則は「反復と沈黙」

この人の言葉をそのまま反復してみる。

「死んでしまえばよかったっておもっていらっしゃるんですね?」「犬の散歩をしたいとリハビリを頑張っているんですね?」そして沈黙を持つことで、相手の気持ちを待ち、理解しようとすること。あなたの話を待っている態度が大切。

時計に目をやるそんな行為が、相手との距離を広げてしまう。

質問④ あなたにとって支えは何ですか?

⇒人は一人ではとても弱い存在ですが、自分のことを心から認めてくれる誰かとの「支えとなる関係」が与えられると一転して強くもなれる。

その支えをキャッチする!家族?友人?ペット?目には見えない大いなるもの?一人ひとり支えは異なる。その支えを見出し、強めていく。本人が選ぶことの自由を考えていく。

どんなことを選ぶ? 療養場所・心が落ち着く環境・尊厳・希望・保清・役に立つ・役割・ゆだねる・栄養・お金 これらを自分で決められるような援助をする。

質問⑤ もう死んじゃうの? どうしても解決できない苦しみを、苦しむ人を支えることはできるのか。

ディスカッション⑤ できないかも。できないかもしれないけど、1対1で自信を持って関わる為には…

⇒「反復と沈黙と問いかけ」イメージは暗闇に小さな灯をともす。この関わりが穏やかになれる一瞬を生み出す。これができれば苦しむ人を支える人を支え、苦しむ当人を穏やかにできると信じて関わりたい!

終わりに

今回のMITORIカフェは、エンドオブライフケア援助者養成研修で学んできたことを、私なりの理解でお伝えしました。養成講座でその後の課題を2例提出し、認められれば援助士としての伝達もできるのでしょうが、今回は資料等お出しすることができず、分かりにくい部分もあったかと思います。

「今回の研修はエンドオブライフケア援助者の入学式です!」と言われましたが、本当にその通りだと感じています。この先ももっと深く学んでいかなければ、本当の理解は難しいことでしょうし、定期的に学ぶことでモチベーションの維持も必要だと思うからです。

また、MITORIカフェで皆さんとディスカッションできれば楽しいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

(文責 松嶋彩子)

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いかがでしたでしょうか?

いま日本は、高齢化がすすみ、多死時代に突入しています。

看取りの需要が増し、国の政策も変化を迫られています。厚生労働省のガイドラインにも、アドバンスケアプランニング(ACP:人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス)という考え方が盛り込まれ、最期まで本人の生き方を尊重した医療・ケアが行われるべきであると示されています。

本人は、どうすれば最期まで自分らしくいられるか?

本人の生き方を尊重し、本人が自分の人生を最期まで自分で選択できるようにするには、それを支える人(ケアラー=医療介護従事者・家族等)の存在が欠かせません。人生の最終段階においては、たとえ自分の意思が明確でも、老化や体調の変化によって、自分ではしづらいことや、できないことが増えてくるからです。

では、ケアラーは本人の意思に十分に応えられるでしょうか。ケアラー自身の心がまえやスキルの準備も必要です。実際には「自信がない」「看取りは、怖い、不安」というケアラーも多いのです。

看取りに向き合えるケアラーを育成する動きとしては、すでにいくつかの養成講座があります。一般社団法人日本看取り士会(柴田久美子会長)そして松嶋さんも受講された「エンドオブライフケア協会援助者養成講座」などです。私も「看取りのドゥーラ」の養成講座を開始したい希望を持っていますので、いろいろな講座を受講しています。

ケアラーは、どのように本人を支えられるか?

人生の最終段階において、まずは松嶋さんの発表にもあったように、病院、在宅、介護施設などのうち、どこで最期を迎えるのか? という環境の選択が必要です。

どこが一番良い、ということではなく、どの選択にもメリット・デメリットがあります。

当事者にとって譲れないことが何なのかをよく考えて選ぶことが大切です。たとえば高齢者の8~9割は「家で死にたい」と考えています。自宅で過ごすことは、何と言っても「1対⒈対応」=ひとりの人のためだけにサービスされる手厚さと生活の「自由」は施設介護では叶えられない魅力です。

一方で、在宅介護をする家族にとって、それが心身の負担になってしまうばかりか、人生選択を介護強制されてしまわないかは、よく検討されるべきポイントです。

一般的に在宅介護は経済的負担が少ないというメリットが挙げられている専門書が多いのですが、そこには、身内(妻・嫁・娘・息子)のケアは無料という根強い意識。家の中に他人は入れたくない=各種ケアサービス者の導入を妨げるという現実があることを見逃したくないと思います。家族の負担の軽減にはお金はかかるのです。

特有のストレスにどう対応するか?

少し厳しいことを言えば、看取りには特有の、見通しの難しさがあります。看取り(死)は、完全に予測することができませんし、もちろんご本人もご家族も、できるだけ長く元気でいてほしいと望まれます。つまり時間的な計画などはたてられませんから、経済的予測も難しくなります。

さらに、介護や看取りには、本人の不安に寄り添うための具体的なスキルが必要になります。死生観は人によって千差万別でしょうが、誰しも死を前にして不安になることには違いは無いと思います。不安になり、迷い、いらだち、それがさまざまな身体症状や言動にあらわれてきます。そのとき周囲で支えるケアラーとして、本人とどのように接していくべきなのかは、重要で難しいテーマです。

単なるストレスとも違い、高齢期であれば認知症も予想され、その症状にも対応しなければなりません。たとえば今日言っていることと明日言うことが全く違うこともあります。金や物を盗られたと言い出すこともあります。相手によって全く違う言動をみせることもあります。誠心誠意、真心で接したケアラーほど、本人のこうした変化には、時として残酷なほど気持ちを傷つけられるものなのです。

語り合い(対話)が鍵を握っている

それを 語り合う(対話)ことが一番難しい壁!!

だからといって在宅での介護や看取りを否定したいのではなく、むしろ現実をよく知ったうえで積極的に選択肢に取り入れるべきだと考えています。どのようなことが起きるのかを知っていれば、必ず解決策や対処方法はみつかるはずだからです。

こうすれば確実によい最期になる、というような「ひとつ」の方法論は存在しません。ですが、誰もが自分の看取りをプランできること、そして家族や専門家が良いケアラーとなって支えていけることが、いまの社会全体のニーズではないでしょうか。

事例をシェアし、それについて語り合うことが鍵となり、私たちにその都度必要なヒントを与えてくれます。

今後も「MITORIカフェ」では、参加メンバーの実体験(毎回のテーマを「私の~」と、個人の体験談にしています)を遠慮なく語りあい、様々な意見が聴けるセッションを重ねることで、参加者各自が気付きを得たり、指針を見出したりしていけるようにイメージしています。

次回はあなたもご参加されてはいかがですか?

まだ毎回定員10名の、小さな集まりですが、充実した語り合いの場となっています。ご家族の看取りを経験された方、看護職、介護職、医療職の方、看取りにご関心のございます方は、どうぞ下記までご連絡ください。

●次回MITORIカフェ開催予定

2019年9月28日(土)14時~16時迄 (先着10名まで。)

場所:東京都新宿区 新宿御苑近くの会議室

テーマ:「私のグリーフケア活動をとうして伝えたいこと。」

発表者:一般社団法人セルフケアネットワーク代表 髙本眞佐子氏

会費:2,000円 

申し込み・お問い合わせ受付先:みんなのMITORI研究会代表 近藤和子 

メールアドレス mothering@nifty.com

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